✏お守りコラム
−第17回−
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そこで考え出されたのが「富士塚(ふじづか)」です。 富士塚とは、富士山に似た形の盛り土を作って、そこにお参りする事で、富士山に登ったのと同じ霊験を授かろうという物です。 富士塚は、安永8年(1779年)に籐四郎という名の植木職人兼行者が、東京の高田馬場に築いたのが始まりと言われます。 以来、先述の富士講が中心となって、数多くの富士塚が作られました。 その数は、南関東(埼玉、千葉、東京、神奈川)だけでも200〜300にものぼったそうです。
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そんな富士塚の一つに行って来ました。 横浜市郊外、住宅地の公園の中です。 この公園、一画に富士塚が在るという以外は、何の変哲も無い普通の公園です。 江戸時代、民衆がこぞってこれにお参りしていたというのがウソのように、誰も気に留めません。
富士塚1
⬆富士塚
(➡別アングルはこちら)
"山頂"に登ると、本物の富士山が遠くに望めます。 多くの富士塚は、富士山がよく見える場所に作られたそうです。 「富士見台」とか「富士見ヶ丘」なんて地名の所には、富士塚が在る可能性大です。 あなたの家の近くでも見つかるかも知れませんよ。
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こんな盛り土をありがたがっていたなんて。 江戸時代の人達が、気の毒に思えるかもしれません。 確かに交通手段は格段に進歩しました。 東京からなら、富士山は日帰りで行けます。 しかし、山岳信仰の根本思想である、自然に感謝する気持ち。 山を見て「ありがたい」と思う心を忘れてしまった我々現代人の方が、寂しい人間ではないでしょうか。 オシャレな家々が並ぶベッドタウンの中で、取り残された様に立つ富士塚を見ていたら、そんな気持ちにさせられるのでした。

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