森の演劇会
【10-3/10】
「カァ──ット!!」
たんぽぽ監督が叫びました。
「さすがはおなもみくん。
迫真の演技だったよ。」
「痛てて。
おなもみのやつ、本気出しやがって。」
ひまわりくんが訴えると、
「すまん。
つい気合い入っちゃって…。」
おなもみくん、さっきまでの威厳はどこへやら、素直に謝ります。
「しっかし、げんまいくん、よくあんな難しいセリフをNG無しで言えたね。」
「いやー、それほどでも。」
「とにかく最後まで劇ができて良かった良かった。」
と、くぬぎくん。
「どんぐりくんのお陰で、退屈な冬の日を楽しく過ごす事ができたよ。
ありがとう。」
と、そらまめくんが言うと、
「こちらこそ。」
どんぐりくんは満足そうです。
「おつかれさまー。」
みんな一つの事を成し遂げた喜びをかみしめています。
ところが、ゆりねちゃんだけが浮かない顔をしています。
「私、剣を突き付けられてる時、お芝居とわかっていても、すごく恐かったの。
本当の自分は、あんな風に命がけで人を愛せるか自信が無いわ。」
「それは、僕達がまだ子供だからだよ。
大人はそういうすごい事ができるんだよ。」
げんまいくんが言いました。
「僕達がまずやるべき事は、大地にしっかりと根を張り、ちゃんと芽を出して、大人になる準備をする事じゃないかな。」
たんぽぽくんは小粒なのにいい事を言います。
「そうね。」
ゆりねちゃんも納得したようです。
「あれ?
よく考えたら私、まだ牢屋に入ったままじゃない。
くぬぎくん、脚本ミスよ!
どーするの?」
このお話は、くぬぎくんの脚本だったんですね。
「ごめんごめん。
じゃあ、機嫌が直って優しい顔になった王様の前で、再度ギャグに挑戦。
…という事で、くろかすちゃんどうぞ。」
「面白くなかったら、また牢屋に逆戻りな。」
どんぐりくんがからかいます。
「プレッシャーだなァ。
ん〜と、えーと。
牢屋の一番下に有る物なぁに?」
「牢屋の"や"の字って言うんだろ?」
「逆戻り決定だな。」
くぬぎくんとどんぐりくんが、間髪入れずに突っ込みます。
「違う違う。
答えは"足"。
足が付いて牢屋に入れられました。。。
なんちゃって。」
面白いような、つまらないような微妙な線です。
「60点。
よって無罪放免とする!」
おなもみくんが太い声で宣言しました。
「よかったじゃん。」
どんぐりくんが楽しそうにくろかすちゃんに言いました。
「一件落着という事で、そろそろお開きにしよう。」
たんぽぽくんが締めました。
そして、みんなは春に立派な芽を出す事を誓い合い、それぞれの土地に帰って行きましたとさ。