森の演劇会
【10-2/10】
と、その時です。
「ちょっと待ったー!
その結婚待ったー!!」
なんと、さっきのひまわりくんではありませんか。
「結婚とは愛し合った者同士がするものだ。
この結婚には愛が無い!」
ひまわりくんはまるで別人のようです。
「あの馬鹿、いくら出番が欲しいからって。。。
どうなっても知らないぞ。」
どんぐりくんは、彼にきつく言った事を後悔しました。
一方オナモミ大王は、突然の乱入者に少しも動揺しません。
「ほほう。
ならば花嫁に聞いてみる事にしよう。
ゆりね、そなたは余が嫌いか?」
「いえ。
滅相にございません。」
「そこの者、聞いたであろう。
間違いでしたでは済まされぬぞ。」
槍を持った城兵が、ひまわりくんを取り囲みました。
「俺は…。
俺はゆりねを愛してるんだ!」
「ひまわりくん。。。」
ゆりねちゃんは、初めてひまわりくんの気持ちを知りました。
「なるほど。
ならば話は別。
余が結婚を決めた神聖な場に、愛云々を説きに来たと言うのなら、即刻貴様の首をはねていた所だ。
ここからはどちらがゆりねを妻とするか、王と民ではなく、男と男の決着をつけようぞ。
そこの者、異存は無いな?」
「望む所だ。」
ひまわりくんは答えました。
「男と男の決着って?」
そらまめくんが小声で尋ねると、
「決闘さ。」
たんぽぽくんが冷ややかに答えました。
「ええー!?
あんな屈強そうな大王に勝てっこないよ。」
くぬぎくんは半ベソかいてます。
「悪い事言わないから、ごめんなさいってあやまっちゃいな。
殺されちゃうよ、ほんとに。」
くろかすちゃんも声を掛けます。
しかし、ひまわりくんは聞いていません。
「いくぞっ!」
とうとう決闘が始まってしまいました。
最初のうちは、ひまわりくんが軽快なフットワークでオナモミ大王の豪剣をかわしていましたが、やはり力は大王の方が上。
大王の放った一太刀がひまわりくんをついに捕らえました。
勝負あり。
ひまわりくんはその場に倒れ、もはや反撃不能の状態です。
苦しそうに顔を上げるひまわりくんの前に剣をかざし、大王が言いました。
「貴様の負けだ。
今からとどめを刺す。
覚悟は良いな。」
大王が剣を振り上げると、ゆりねちゃんがひまわりくんの元に駆け寄り、間に入りました。
「何のつもりだ。」
「大王様、この人を殺さないでください。
この人を殺すならば私も死にます。」
ゆりねちゃんは本気です。
するとどうでしょう。
今までイカメシかったオナモミ大王が、見る見る優しい顔になったのです。
「ああ、殺しはしない。」
そして大王は低い声で話し始めました。
「こんな宮殿に一人で居ると、もしやこの国には愛が無いのではと心配になるのだ。
ところがおまえ達は今、余の目の前で愛を見せた。
この国にも立派な愛が在る事を証明してみせた。
おまえ達が余の憂いを救ってくれたのだ。
感謝するぞ。」
「ありがとうございます。」
ゆりねちゃんは涙を浮かべて礼を言いました。
周りのみんなも泣いています。
「あの大王、よく見るといい男ねぇ。」
くろかすちゃんがぼそっと言いました。