✏お守りコラム
−第6回−
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🔶縁起の良いミサイル
文化人類学(*注)で「カーゴカルト」という用語が有ります。 直訳すると積荷信仰。 文明と非文明との接触の中で起こる「文明への反発」の、ごく特殊な例として南太平洋の島々やニューギニアで確認された現象です。 未開の地で、文明国の船が難破したり、飛行機が墜落し、さらに乗組員が早々に他の地に脱出したか又は死亡してしまって、カーゴだけがその地に残った場合が前提となります。 カーゴの中に詰まった圧倒的な文明の利器の数々に、原住民達は驚き、喜び、そして恐怖します。 自分達と同じ人間がこのカーゴを置き忘れていったと彼らが考えるのはむしろ不自然で、神もしくは先祖の霊がこれらをもたらしてくれたと考えるのが当然と言えます。 これだけなら「昔、神のお恵みがあった」と代々語り継がれておわりなのですが、彼らにとって悲劇なのは、その後何年かして文明社会が"普通の手段"で乗り込んで来た事です。 そして、彼らは厳しい現実を知るのです。 文明人は前と同じカーゴを彼らの元に運んで来るのですが、この中の物を享受するには、煩わしい文明社会のルールを受け入れなければなりません。 どうしてもそれが出来ない人達は、次第に"最初のカーゴ自体"を信仰の対象にしていきました。 最初のカーゴのインパクトが強烈だった分、信仰もハンパではありません。 これが、カーゴカルトです。

*注:
世界の習俗を調査研究し、社会・文化的見地から人類を体系付けする学問。 ちなみに、生物学的見地から人類を研究する学問を自然人類学と言う。

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