✏お守りコラム
−第32回−
【2/6】
■クジャク
我々が動物園等でよく目にするのは、主にインドクジャクとマクジャクで、前者はインド、スリランカ、後者はそれより東の東南アジアに生息します。
インドでは、あの尾羽の目の模様が悪い物から家族を守る目、「邪眼(じゃがん)」を「睨み返す」作用が有る物として、身に付けたり、扇子や日傘に用いられました。
中国や日本でも、高級な装飾品兼お守りとして珍重されました。
◇◇
クジャクは、16世紀に七面鳥(*注1)が北米南部から持ち込まれる以前のヨーロッパで食肉用に飼育されていましたが、尾羽は忌み嫌われました。
たった1枚でも家に入り込んだら、災難が降り掛かると信じられていたのです。
目の模様が邪眼除けではなく、邪眼そのものと考えられていたからです。
「邪眼」とはあまり耳にしない言葉ですが、他人、ほかの家族、世間から自分や自分の家族に向けられる悪しき目、妬み、嫉み(*注2)、恨み、羨み、軽蔑などの良くない心が各人の体から離れて呼び合い、集合した物です。
日本語の「怨念」という言葉に近いかもしれません。
ヨーロッパのお守りは、この「邪眼」除けが基本で、トルコのナザル・ボンジュウはその好例です。
日本人だって、そういった他人の目と、それに共鳴してしまう弱い心、虚栄心、見栄、劣等感、物欲、出世欲などが災いを引き起こす事は、賢い家庭なら暗黙の了解となっているのですが、直接的にそれを除けるお守りという物は有りません。
もう少しオブラートに包んだ概念、厄(やく)とか、穢(けが)れとか、鬼とかにして、それに対抗するという形式をとっています。
◇◇
それにしても…、我が愚かしき半生を振り返るに、「辛い」と感じた出来事の大半は、他人から良く見られたい、又は馬鹿にされたくないと思って無理をしたり。
余裕が有る所を見せたくて、わざと注意を怠ったり、軽はずみな行動を取って大失敗したり。
せっかく続けていた地味だけど大切な事を、他人のちょっとした一言から「格好悪い」と言ってヤメてしまったり。
大きな目標を持って何かを始めるのはいいけれど、きっかけがいっつも「人に自慢したい」だから、すぐにくじけてしまって、ますます自分がイヤになったり。。。
ほんと、不幸とは邪眼に由来するのだという事をつくづく思い知らされます。
*注1:
七面鳥は英語で「turkey」ですが、トルコ原産ではありません。
七面鳥以前に、アフリカからトルコ経由で持ち込まれたホロホロ鳥(guineafowl)と混同されたのではないかと言われています。
*注2:
妬(ねた)み…他人の幸福を意味も無く忌々しく思う事。
嫉(そね)み…自分より優秀な人を羨ましく思う事。
嫉妬(しっと)は字の通り、嫉みが先で妬みが後ですね。
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