森の演劇会
【2/10】
少し行くと、どんぐりくん達の林よりも落ち葉がやや明るい色になりました。
さくっ、さくっ。
音は同じです。
「あっ、お客さんだー。」
そこに居たのは、どんぐりくんとは明らかに様子が違う小さな男の子でした。
「ぼく、くぬぎくん。
君は?」
「僕どんぐり。」
どんぐりくんは、なんて自分はツイてるんだろうと思いました。
なぜなら、ほんの少し歩いただけですぐに役者の候補が現れたのですから。
あとはこのくぬぎくんという子が興味を示してくれれば…。
どんぐりくんはさっそく演劇の話を始めました。
くぬぎくんは小さな目を輝かせて聞いています。
「やったぞ!」
どんぐりくんがそう心の中でつぶやいた次の瞬間、くぬぎくんの口から思いがけない言葉が飛び出しました。
「それで、お話は決まってるの?」
そうです。
どんぐりくんはキャスティングに頭が一杯で、ストーリーの事をすっかり忘れていたのです。
くぬぎくんは少し呆れてしまいましたが、
「じゃあ、二人でお話考えようよ。」
と提案してくれました。
初冬のクヌギ林の昼下がり。
静かな時間が過ぎていきます。
どれくらい経ったでしょう。
静寂を破ったのはくぬぎくんでした。
「やっぱりお姫様が悪い魔王にさらわれて、僕達勇者が助けに行くっていうのがカッコイイと思う。」
「うん、それがいい。」
どんぐりくんは大賛成。
そして二人は、申し合わせたように森の出口に向かって歩き出しました。
「やっぱりかわいいお姫様は、森の中より草原でしょ。」