森の演劇会
【3/10】
森を出て小川沿いの道を下って行くと、お百姓さんが使う納屋が建っていました。
その裏手の小さな菜園の方から女の子の声がします。
「お姫様。」
「お姫様。」
期待に心を弾ませ、声のする方に廻ってみると…。
そこで遊んでいたのは、これから"さらわれるにはふさわしくない"明るくて活発な女の子でした。
二人に気付いたその子は、
「私くろかす。
ねぇねぇ、電信柱の一番てっぺんに有る物、何だか知ってる?」
いきなり変な事を言い出しました。
ぽかんとした表情の二人を前に、くろかすちゃんは続けます。
「答えは"で"の字。
おもしろかった?」
全然面白くありません。
二人とも首を横に振りました。
「ちょっとイメージ違うな。」
「うん。」
どんぐりくんとくぬぎくんがもぞもぞ話しているのを見て、くろかすちゃんは少し怒った声で、
「何ヒソヒソ喋ってるの?
感じ悪〜い。」
どんぐりくんは渋々演劇の事を話し始めました。
「何それ。
今時魔王とお姫様と勇者ぁ?
だいたいさらわれる身にもなってよ。
これだから男は勝手だって言うの!」
返す言葉もありません。