森の演劇会
【4/10】
「わかったよ。
ほかをあたるよ。」
どんぐりくんとくぬぎくんが歩き出すと、後ろからくろかすちゃんが付いて来て言いました。
「私、さらわれるより人を笑わす方が好きだなぁ。
こういうのどう?
最近笑わなくなった王様を心配した大臣が、国一番のギャクの達人、つまり私を王様の元に連れて行くの。」
「ギャグの達人ねぇ。」
「黙って聞いて。
だけど王様があまりにイカメシイ顔してるので、恐くて声が出ないの。」
「どこかで聞いた話だなぁ。」
「何だっけ?」
「だから黙って聞いてよ!
それで王様は怒ってその子を牢屋に入れてしまうの。
かわいそうな私。。。」
くろかすちゃんは本当に涙が出そうになりました。
─────
「声しなかったか?」
「うん。」
「だから声が出なかったの!」
「いや、確かに声がした。」
「どうしてよ!?」
「しーっ!」
どんぐりくんは、人差し指を口の前で立てて"静かに"のポーズをしました。
「あっ、あそこに…。」
くぬぎくんが真っ青な大空の上を指差しました。
見るとタンポポの綿毛が風にあおられ、錐揉み飛行しているではありませんか。
「助けてぇー。」
綿毛の先っちょの、小さな小さな種が叫んでいます。
「ほら、早く私の上に乗って!」
くろかすちゃんは二人に指示しました。
くろかすちゃんの上にどんぐりくん、どんぐりくんの上にくぬぎくんが乗って大きく手を延ばしました。
ナイスキャッチ!
くるくる舞っていた綿毛を見事つかむ事ができました。
「危ない所を助けてくれて、ありがとう。」
たんぽぽくんは三人にお礼を言いました。
「それにしても君、勇気あるね。」
どんぐりくんは感心しています。
「そんな事ないさ。
僕ら子供のうちはみんなああやってふわふわ漂うのさ。
今日みたいに風の強い日は大変だけど。
でも、こんな僕もいつかはしっかり大地に根を下ろして、立派な花を咲かせたいって夢見てるんだ。」
「小さいけど、しっかりしてるんだね。」
「大丈夫。
君なら見事な花を咲かせられるよ。」
「私、大地に根を下ろす事に詳しい人知ってるわ。
今からその人の所に行ってみない?」
三人はくろかすちゃんの後に付いて行く事にしました。