森の演劇会
【6/10】
目的の田んぼに着きましたが、もう既に稲は刈り取られた後。
剣山(けんざん)の様な刈り跡が一面に広がっているだけです。
「おーい。
げんまいくーん。」
どんぐりくんは、大きな声で呼びました。
「は〜ぃ。」
田んぼの隅の方から、かすかですが返事が聞こえます。
みんながそちらに行ってみると、あら大変!!
そこはモミ殻捨て場になっていて、肥料にでもするのでしょうか、誰かが火を付けて静かに燃えていたのです。
「げんまいくん、どこに居るんだい?」
「ここだよ、ここ。」
まだ燃えていない場所から声がします。
「私、火ぃ弱いの。」
「僕も。」
くろかすちゃんとたんぽぽくんは、熱くなったモミ殻の山に近付けません。
どんぐりくんとくぬぎくんは、急いでモミ殻の山をかき分けました。
「アチチチ…」
「ケホケホ」
中から"モミ擦り"を免れたげんまいくんが現れました。
まさに間一髪。
「ありがとう。
僕はげんまい。」
四人も順番に自己紹介しました。
「助けてくれたお礼に、何かさせてもらえないかい?」
げんまいくんの喋りは、どこか知的なにおいがします。
「なら、お話考えてくれない?」
さっきまで火を怖がっていたのに、くろかすちゃんは"げんきん"です。
「ふむふむ、なるほど。
きっと王様が笑わないのは、何か心配事が有るんだと思う。
その心配の種を取り除いてあげれば、心から笑えるようになるよ。
もちろん、面白ければの話だけど。」
さすがはげんまいくん、鋭いです。
「とにかく王様の所に急ごう。」
でも何か勘違いをしているみたいです。
「王様は何処に居るんだい?」
「あ、あっち…。」
くぬぎくんは適当に指差しました。
「よし、あとは歩きながら考えよう。」
五人は、居るはずのない王様の住む、在るはずのない宮殿を目指して歩き出しました。