森の演劇会
【7/10】
やたら元気なげんまいくんと、逆に元気の無いその他四人が、田んぼの横の空地を歩いていると、三人掛けの大きな"さや"のベンチに、そらまめくんがたった一人で腰掛けていました。
「なんだか楽しそうだね。」
「楽しいのは一人だけよ。」
誰かさんの小言は、そらまめくんには聞こえなかったようです。
「いやね、ほかの二人は土に入っちゃって。。。
一人で寂しくしてた所なんだよ。
そんでね…」
そらまめくんが話を続けようとすると、げんまいくんがさえぎりました。
「悪いけど、僕達急いでるんだ。」
そらまめくんは急に悲しそうな顔になりました。
体が大きい分、その姿も痛々しいです。
それを見て正直なくぬぎくんが、
「別に急いでる訳じゃぁ…」
と言いかけた所で、慌ててどんぐりくんが、
「いや、急いでる事は急いでるんだけどー」
「そうそう、せっかくこうして会ったんだもん。
お話だけでも聞いてかない?」
くろかすちゃんがフォローします。
「仲間は多い程いいしね。」
たんぽぽくんも付け足しました。
「そう?
じゃ、お言葉に甘えて…」
それからそらまめくんがしゃべる事しゃべる事。
よっぽど話し相手が欲しかったんでしょう。
イライラ顔のげんまいくんをよそに、他のみんなはそらまめくんの話に付き合ってあげました。
「そうか!」
そらまめくんの話が一段落した所で、げんまいくんがいきなり叫びました。
「寂しいんだよ。
王様も。」
「え?」
「王様?」
そらまめくんのたわいもない話の直後だったので、みんな一瞬何の事だか分かりませんでした。
「ああ、王様ね。」
「そう、王様は寂しいんだよ。」
げんまいくんは、自分の出した答えに満足したように繰り返しました。
「王様は独身かい?」
「…だったと思うよ」
どんぐりくんが適当に答えてしまいました。
劇だと打ち明けるチャンスだったのに。
くろかすちゃんは、キッとどんぐりくんをにらみました。
「やっぱりな。
王様はお嫁さんが欲しいんだよ。」
げんまいくんは意外と単純です。
つられてどんぐりくんも、
「じゃあ、お嫁さんを捜そう!」
と言ったものだから、くろかすちゃんは露骨に、
「また余計な事を言って…。」
という顔をしました。
ところが周囲を見ると、なぜかみんなの目が自分に注がれています。
「まさか私?
私はダメよ!
一応"囚われの身"だから。。。」
みんなはそれを聞いて納得の表情です。
なぜかよく分かってないはずのげんまいくんも。