森の演劇会
【8/10】
「お嫁さんなら私が適任じゃない?」
見るからにカワイイ系のゆりねちゃんが土手の斜面に立っていました。
「なによ。
人の話に勝手に入って。」
「役者不足のご様子でしたので、お声をお掛けしたのですが、ご迷惑だったかしら?」
「なにさ!
にくたらしいー。
まだ子供じゃない!」
思い切り険悪なムードに男共はオロオロするばかり。
比較的冷静なげんまいくんが仲裁を試みます。
「ほら、くろかすちゃんは心に決めた人が居るみたいだし…。」
「私そんな人居ないわよ!」
「だって、いまさっき虜(とりこ)になってるって言ったじゃないか!」
くろかすちゃんは言葉に詰まりました。
「となると、お嫁さんになれるのはゆりねちゃんしか居ないだろ。
ここは彼女にお願いする事にしようよ。」
「そうだね。」
「そうしよ。」
他のみんなも相づちを打ちます。
「そういう事じゃなくて、おかしいんじゃない?
寂しいから花嫁を差し出すって、レストランでお食事出すみたいに。
なんで王様にそこまでしなきゃいけないの?」
くろかすちゃんは元も子もない事を言い出しました。
「それは正論だけど、それも含めて王様の所で話し合おうよ。」
げんまいくんは問題を先送りするタイプのようです。
すると、さっきから無口だったたんぽぽくんがふわりとくろかすちゃんの所に寄ってきて、そっと耳打ちしました。
「だって君を牢屋から出す為じゃないか。」
くろかすちゃんはさっと落ち着きを取り戻し、
「そうね。
行きましょ。
こんな子供を王様がお気に召すかどうか知らないけど。」
そのやり取りをそばで聞いていたどんぐりくんとくぬぎくんは、何だかおかしくなってしまいました。
ともかく一同は再び歩き始めました。