✏お守りコラム
−第19回−
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虫送りとは、田植えが終わった5月下旬〜7月にかけて農山村で行われていたお祭りです。
主に稲の害虫を送り出すのが目的で、「蝗(いなむし)送り」「稲子(イナゴ)祭り」とも呼ばれます。
前回お話した「疱瘡送り」と同様、虫を追い払うのではなく、丁重にお帰しするのです。
イナゴ等の虫を捕まえて来て、小枝やおみこし、ワラで作った馬や舟などに乗せ、太鼓を打ち鳴らし松明を掲げて、念仏や囃言葉を唱えながら葬列の様に村内の田んぼを練り歩き、最後に村はずれの川や海に返します。
関西では、源平争乱期の武将、斎藤実盛(さねもり)の人形を使って虫送りをする所も有ります。
寿永2年(1183年)、篠原(*注)の合戦で、手塚光盛と一騎打ちになり、不覚にも実盛の馬が稲の株につまずき敗れた事から、稲の害虫は実盛の怨念の仕業とされ、虫送りの行事に登場するようになったのです。
近年の農薬の発達により、虫送りはその役目を終え、急速に廃れていきました。
今では、郷土芸能の保存という名目で、いくつかの地域で行われているだけです。
そんな所も「疱瘡送り」とよく似ています。
*注:篠原古戦場
今の石川県加賀市。
この合戦で実盛が被っていた兜が、近くの多太神社に安置されています。
ここを訪れた松尾芭蕉の詠んだ句が、かの有名な『むざんやな 甲の下の きりぎりす』です。
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