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みにくいすいかの子
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どれぐらい歩いたでしょう。
森をぬけ、山を越え、川を渡り、みにくいスイカの子は、広大なウリ畑にやってきました。
そこには収穫を間近にひかえた2個の大きなマクワウリがいました。
「おや、君はスイカの子だね。
君はずいぶんとみにくいけど、僕達の仲間に入れてあげるよ。」
みにくいスイカの子はいままでひとから親切な言葉をかけられたことがなかったので、とてもうれしくなりました。
「ぼくみたいなのがいて、迷惑じゃないの?」
「ハハハ、俺達はしょせんマクワウリ。
つけものにされる運命の野菜さ。
きどったってしょーがないさ。
な、そうだろ!」
「ウン、その通りさ。」
2個のマクワウリはとても息が合っています。
「この人達と一緒なら幸せになれるかもしれない。」
スイカの子はそう思いました。
と、その時です。
ゴーッというものすごい音とともに巨大なトラクターが地平線のむこうから姿を現しました。
「逃げるんだ。」
2個のマクワウリは言いました。
「でも君達は?」
「俺達はつけものにならなければいけないんだよ。
でも君は違う。
さあ、行くんだ。」
トラクターはもう、すぐそこまで来ています。
みにくいスイカの子は必死で近くの草むらに飛び込み、草の間から、ふるえながらその恐ろしい光景を見ていました。
マクワウリ達は次々に刈り取られ、皮をむかれ、縦切りにされていきます。
そして、あとに土だけになった畑を残してトラクターは去って行きました。