●●
みにくいすいかの子
【7/10】
●●
みにくいスイカの子は真夏の海にやってきました。
ヨットやウインドサーフィンのセールが蝶の群れのようでとてもきれいです。
浜辺ではビーチボールで遊ぶ人とか、フリスビーを投げ合う男女とか、水をひっかけあってはしゃぐ子供達とか、貸しゴムボートで沖へ向かうお兄さんお姉さんとか、砂のお城を一生懸命作っている男の子とか、ただ寝転がって肌を焼くだけの女の人とか、念入りにラジオ体操をするだけで結局海には一度も入らないで帰ってしまうおじさんとか、いろんな人達がいます。
みんな楽しそうです。
おや?
むこうの砂浜でじっとうずくまっているのは、お兄さんスイカではありませんか。
そばに、目かくしをして長い棒を振り回している男の子がいます。
「あんな所で寝ていたらあぶないのに。」
これが人間達の間で「はやり」の『すいか割り』だということを、みにくいスイカの子が知るはずもありません。
「またいじめられるかもしれない。」
そう思ったスイカの子は急いで海岸から逃げ出しました。
そのあと、あのお兄さんスイカがどうなったかは言わないでおきましょう。
一番下の弟を「みにくい」というだけでいじめていなければ、助かっていたかもしれないとだけ言っておきましょう。